歯科インプラントとは

歯科インプラントとは

インプラントとは、医学用語で「しっかりと埋入して植立する(埋植する)」というのが本来の意味で、人工臓器の移植の際に用いられる言葉です。
歯科領域で人工臓器にも例えられるのが「歯科インプラント」で、何らかの原因で歯が失われた顎の骨に、人工の歯根を埋入しその上に人工歯冠を取り付け、天然の歯と同じように機能させること、またはその治療法のことです。
これまでは義歯(部分入れ歯・総入れ歯)、ブリッジ等が主流だった歯科補綴治療の概念を覆すシステムで、「第三の歯」「最も天然に近い歯」と言われ、あたかも自分の歯のように自由自在に食べ物を咀嚼出来るようになることが期待できます。

インプラントの仕組み

現在最も普及しているインプラントの構造は、

インプラントの仕組み

上部構造

人工歯冠(じんこうしかん)とも言います。
ジルコニア・セラミック・ハイブリット・金属など様々な素材で作られます。

アバットメント

支台部(しだいぶ)とも言います。
上部構造とインプラント体をつなぐ部分です。

インプラント体

フィクスチャー・人工歯根(じんこうしこん)とも言います。
顎の骨に埋め込みます。

から成り立っています。
そしてインプラントが「第三の歯」、あるいは「最も天然歯に近い歯」といわれるゆえんは、このインプラント体を歯槽骨(顎の骨)の中に埋入して、 その上に上部構造を固定させるところにあります。
インプラント治療をおおまかにまとめると、何らかの原因で失われた歯の歯槽骨に穴をあけ、そこにインプラント体を埋入して、これが歯槽骨と完全に結合した段階でアバットメントを取り付け、その上に上部構造をはめ込むというのがアウトラインになります。

インプラントの
メリット・デメリット

インプラントのメリット

①天然歯のような噛み心地が期待できる

人工歯根を顎の骨に埋入して完全に固定しているため、噛む力が天然歯とほとんど変わりありません。
固いものも天然歯と同じように噛むことが出来ます。

②外れる心配はほとんど無い

歯槽骨にぴったりと結合した人工歯根の上に支台部と人工歯冠が固定されているため、外れる心配はほとんどありません。
義歯では「外れるかもしれない」という心理面での抑圧や不安から解放され、楽しく食事が出来、ゆとりをもっておしゃべりを楽しむことが出来ます。

③審美的で自然な仕上がり

人工歯根の上の支台部(アバットメント)を色々選択でき、これを歯肉の下に隠れるよう設計出来ます。
また、上部構造(人工歯冠)もさまざまな素材から選択でき、ご自身の審美的な希望に合わせたものを選ぶことが出来ます。

インプラントのデメリット

①長期にわたる治療期間

一般的な例で、チタン製の人工歯根が歯槽骨と結合する期間だけで見ても、上顎で6ヶ月、下顎で3ヶ月必要で(現在はもっと早くなっています)、
さらに人工歯冠まで完成するのに、4~8ヶ月の治療期間になります。
ただし現在では「即時インプラント治療」という、骨がしっかりしていれば1日で仮歯まで装着するやり方も可能になってきました。(※術前後は経過観察が必要です。)

②治療を受けるのに制限

糖尿病・腎(じん)不全・肝炎・心臓病・ぜんそく・リウマチ・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)・高血圧・妊婦などで、病気の進行状況や全身状態によって、手術に危険を伴うおそれがあるときには、治療ができないことがあります。
ただし、これはインプラント手術だけでなく、抜歯などの口腔外科手術を受ける患者さん全般にあてはまることです。

③インプラント周囲炎など
のおそれ

インプラントも天然歯と同様にきちんとメンテナンスがされていないと、インプラント周囲炎を引き起こします。
これは歯周病のような症状で、インプラント周囲の歯肉が赤く腫れ、ポケットから出血・膿がでて、進行すると歯槽骨が吸収され、ひいてはインプラントの脱落を招きます。
プラークを残さないように、毎日の口腔ケアと歯科医院での定期検診が大切です。

④健康保険が使えず、
治療費は高額

インプラントにかかる費用は健康保険がきかない自費診療のため、医療機関によってばらつきがあります。
上部構造の素材や各種検査法や治療法、さらにオプション手術の有無によって費用が変わってきます。
ただし、インプラント治療は高額治療費として認められているので、医療費控除(一般に治療費が10万円以上200万円まで)を受けられます。
合わない入れ歯に不満を感じながら数年おきに修理または新製を繰り返すことと、一回にかかる費用は高額でも、その後十数年は快適に過ごせることを比較・検討してみてください。
インプラントにかかる費用を決して“高い”とは感じないはずです。

コンピューター支援による
インプラント・ガイデッドサージェリー

手術をリアルタイムに誘導する
「ナビゲーションシステム」

手術をリアルタイムに誘導する「ナビゲーションシステム」

「ナビゲーションシステム」とは、新しいデジタルコンピューター技術を用い、インプラント治療を精度が高くで低侵襲、安全なものに誘導するシステムです。

3次元情報

わかりやすくいうと、手術前の検査・診断で得られた患者さんの顎骨のCT画像データを、多平面および3次元情報に変換し、それを基に、歯科医師が立てた治療計画そのままに、PCモニター画面を見ながらリアルタイムで手術が進められるという画期的な装置です。
実際の手術中では、ナビゲーションからの指示に従って、歯科医師は正確・安全に手術を進めることができます。
インプラントを埋め込む位置・深さ・角度をナビゲーションが正確に表示してくれますから、歯科医師はPC画面上でドリルの位置を確かめつつリアルタイムで手術を行えます。

治療計画どおりに手術をガイドする
「サージカルガイド・システム」

治療計画どおりに手術をガイドする「サージカルガイド・システム」

インプラント治療計画において、CT撮影した画像を多平面および3次元でコンピュータ解析して検査・診断することの有効性については前述しました。
最近ではこのシステムはさらに進化し、治療計画の立案だけでなく、シミュレーションしたとおりの適した位置に、インプラント埋入をガイドすることもできるようになりました。これがサージカルガイドシステムです。
まずCT撮影した画像をもとに、埋入のシミュレーションを行い、そのデータを基に新しいコンピュータ・テクノロジーのCAD/CAM(設計・製造)および3Dプリンターにより、レーザーを用いて患者さん自身の顎骨の解剖学的模型とサージカルガイドをレジン樹脂から光造形により作製します。

サージカルガイド

サージカルガイドには、インプラントを埋入する部位にドリルを規制するためのガイド溝がつくられており、それに沿って治療計画どおりに正確にインプラントを埋入することができるのです。
これにより安全かつ正確に、そして低侵襲で短時間にインプラント手術が行えるようになりました。
当院では約95%でこのシステムを使用しています。

光機能化技術について

光機能化技術とは

光機能化技術とは

光機能化とは、簡単に言うと「骨とチタンの結合能力を向上させる」ことです。
インプラント材料であるチタンは骨との結合親和性に優れていますが、時間とともに表面の性能が落ちていきます。これは人間の老化と同じような状態となっていきます。
たとえ未開封・未使用の状態でも、製造後1週間を経過した以降から経時的に、骨となじむ力や骨と結合する能力、さらには骨を造るのに必要な細胞を引き寄せる能力が落ちていくことがわかっています(チタンの生物学的老化)。工場で作られたすぐのチタンは水とのなじみが非常に良く、”親水性”という状態にあります。
しかし、時間とともに水とのなじみが悪くなり疎水性(水をはじく)とよばれる状態に変化するのです。
それだけではなく、工場で作られた直後の新鮮なインプラントの周りには多くの骨が出来ますが、時間が経ったインプラント(現在の全てのインプラント)では骨の量は半分に低下するのです。
そのため製造からできるだけ時間の経っていない新鮮なインプラントを患者さんに提供することが望まれますが、工場保管や流通の過程で、すでに数ヶ月経っているのが今までのインプラント材でした。

光機能化技による
インプラント成功率の向上

光機能化技によるインプラント成功率の向上01
光機能化技によるインプラント成功率の向上02

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)小川隆宏終身教授による光機能化技術の研究では、ある一定の波長の光を複数インプラントにあてることにより、40~60%程度が限界だった骨の結合面積を約98.2%まで向上させることに成功しました。

安定性と成功率も向上

これによりインプラントが新鮮な状態に回復し、安定性と成功率も向上します。効果については動物実験やヒトの細胞を使った実験で証明され、多くの一流科学誌に掲載・各種報道されています。この技術は、インプラントにとって大きな技術革新と言えるでしょう。
当院でもこの技術をいち早く取り入れ、高品質でのインプラントのご提供が可能となりました。

デジタルコンピューターによるインプラント治療の流れ

インプラント治療の流れ

  • 問診とカウンセリング

    1問診とカウンセリング

    十分なコミュニケーションにより患者さんの悩みと希望を詳しくお聞きします。

  • 各種デジタル検査と診断

    2各種デジタル検査と診断

    診断用テンプレートを製作し、 それを口腔内に装着して CT 撮影を行い、検査と診断 をします。

  • インプラント治療計画

    3インプラント治療計画とシミュレーション

    コンピューターによりインプラント治療計画の立案とシミュレーションを行います。

  • サージカルガイドの製作

    4サージカルガイドの製作

    インプラント埋入の治療計画から 3D プリンターによりサージカルガイドを 製作します。

  • コンピューター支援のガイデッドサージェリー

    5コンピューター支援のガイデッドサージェリー

    患者さんに手術の説明とインフォームドコンセントを行った後、 専用の手術室で、切開しない低侵襲のガイデッドサージェリーを行います。

  • 口腔内スキャナー(または通法)による精密印象を採得。

    6口腔内スキャナー(または通法)による精密印象を採得

  • 専属歯科技工士によるCAD/CAM 補綴物の製作

    専属歯科技工士によるCAD/CAM 補綴物の製作

    個々の患者ニーズに適した満足のいく補綴物をCAD/CAMで製作します。
    CAD ソフトによりインプラントフレームデザインの作成とCAMミリング機器によりオールセラミック補綴物を削り出して製作する。

  • 最終補綴物の装着

    8最終補綴物の装着

    最終補綴物を口腔内に装着します。 最終補綴物の形・色等をチェックして噛み合わせを調整して装着します。

インプラントを長持ちさせるために

治療後のメンテナンス

インプラント治療は、手術が終了したからと言ってそれで安心というわけではなく、むしろそこからがスタートといえます。
インプラントを長持ちさせるためには、以下のことに注意が必要です。

専属歯科衛生士による長期的メンテナンス

長期にインプラントを保存するために、3ヶ月間隔でメンテナンス(PMTC)を行います。